風月涙

自転車を漕ぐ 金木犀薫る夕暮れの町
一人だと信号待ちがやけに長く感じるんだな
冷えてく指先 熱い目の奥
踏み込んだペダルは相変わらず重くて
なかなか前に進まない
ふと今の自分と重ねてみた
余計に目の奥が熱くなってしまった

風が頬を掠めたんだ
「本当に泣きたいその日まで
涙はとっておけ」と囁くように
呼ばれた気がして上を見たら
薄闇の中に丸い光
そうか、今日は満月だっけ

「泣くほど悲しいのか？悔しいのか？
それなら気の済むまで泣けばいい。
だけどあんまり泣きすぎちゃあ
涙の有り難みが分からなくなりはしないか？」
いいや違うよ
涙を流すことで洗い流すんだよ
悲しいことも苦しいことも嫌なことも全部
でないと心が真っ黒に汚れちゃうだろう？

暗い畦道を駆ける白い自転車
どこまで行けるだろう
このまま朝まで走り続けようか
気付けば頬を伝ってた雫
風が僕の背中を押した

金木犀の薫りが鼻をくすぐる
どこまで行けるだろう
このまま朝まで走り続けようか
これ以上涙こぼさぬように
僕の上の月を見上げた

風月涙―ﾌｳｹﾞﾂﾙｲ―


(一応自作。矛盾の塊。ごめん。笑
投稿するつもりなかったんやけど何となく気分。
今晩は月が綺麗だ。)